サンドリガと松の実

先日、親戚たちの畑と夏の家があるサンドリガに行ってきた。村から上流に向かい一番目の支流の沢を、私の足で45分ほど登ったところに十数世帯の畑と家が点在する。

バラングル村は近年、トタン屋根とセメント床の新しいタイプの家々が次々と建ち、スナック菓子とソフトドリンクが主なる商品の店ができて、二、三十年前の様子とずいぶん変わったが、サンドリガは未だに電気もなく、ほとんどの家は昔ながらの造りだし、大した変化はない。

 

目の前に妖精が住むといわれるバフック湖を抱える標高5000メートル近い山々がそびえ、よそからの人間も来ず、聞こえるのは鳥の囀りと、遠くで山羊の群れをコントロールする牧夫の口笛だけ。平和で静かな環境にいつ来ても心が洗われる。

 

この数年、サンドリガなどの支流の山々に土地を持つ者たちは、秋になるとにわかに忙しくなってきている。というのは山の松から獲れる「松の実」が高値で売れるようになったからだ。松ぼっくりのカサの間に並ぶ松の実は、それまで地元民にわざわざ食べられることもなかったという。実を取り出すために手が松ヤニでベタベタになるし、実もクルミなんかに比べると小さく腹一杯になるわけでなし、そこまで苦労して収穫する必要性がなかったのだろう。

 

しかしここ数年は、松の実が貴重な現金収入になっている。昨年15万ルピーの収入があった者もいるが、今年はさらに値が上がっているという。この辺りの山の松ぼっくりは形が大きく、当然のことながら実も日本で見る物の倍近くの大きさなので、価値があり高値で売れるのだろうか。何にしても自然創造の神が下さった素晴らしい贈り物であることには間違いない。

 

 

いっせいに松ぼっくりを取ってしまうと、将来的になくなるのではと危惧してしまうが、今年蕾となっているのが来年松ぼっくりになるからなくなることはないという。実際に蕾を見てないので、何ともいえないが、山林破壊にならないことを願う。