納得いかない「家屋修理プロジェクト」/ Is it worth huge budget of the project

 私は30年間以上カラーシャの谷に住んで、カラーシャの生活を見守ってきました。来た当時は確かに「虐げられた貧しい少数民族」の印象が強かったのですが、ここ数年間のカラーシャの経済状況は非常に良くなってきていると思う。今やけっこうな数の若い人たちが政府の仕事(ポリスが多いが)について安定した収入を得ているし、多くの女性たち(8割以上?)はベナジール支援金(数千ルピー)を3ヶ月に一度もらっています。時々はNGOなどからの支援金や支援物資も届いています。

 

My observation by living in the Kalasha valleys for 30 years, Kalasha economic situation has been much improved recent years due to quite many of the young generation getting stable income by government employment, and many of the women getting Venazir income support and some privilege assistances from aid organisations.

 

 

 何といっても、カラーシャたちは個々に家や畑を持っているし(最近は人口が増えて、完全自給はできなくなっていますが)、冠婚葬祭用のチーズや肉を供給する数十頭の山羊や数頭の牛を所有しています。ですから外の人々が想像するほどには貧しくありません。

 

 1990年代からずっと私はルンブール谷でボランテイアとして活動してきました。この周辺で初めての水力発電プロジェクトを少ない予算で遂行し、この辺りで一番安定した電気を今も供給できています。生徒たちへの教科書無料配布から始めた、子供の基礎教育促進活動、伝統の織りを継承させながらのハンドメイド・クラフト作り(手漉きの紙作りを含む)、子供たちの図書室を中心とした多目的ホールの建設・設置。鉄砲水から村を守る堤防建設等、カラーシャの未来を思って一生懸命にやってまいりました。

 

 気がついたら私もいい歳になってしまい、もうボランテイア活動は引退していいかなと感じています。キラン図書室や、語り部が語った本の制作などはこのまま継続したい思いますが。もうカラーシャたちが自分の足で立って生活して行けるようになっていますし、そうしなくてはならないと思います。私自身は、この自然豊かで(ほんとうは日本の方が豊かと思うけど)平和な環境の中で、神に感謝しながら、カラーシャの親戚や隣人たちと静かに暮らしていきたいと願うようになりました。

 

 しかしながら、ここに来て、目の前で行われている政府のカラーシャに向けてのプロジェクトのやり方があまりにも酷くて、普段は政府のことについては面倒だから関わらないことにしている私も俄然怒っています。

 

 それはイムラン・カーン首相が唱える「パキスタンで雨風をしのぐ家を持たぬ人々にー500万軒の家屋を建設しようー」プロジェクトの下で、カラーシャの谷にも160軒の家屋を修理するプロジェクトが開始されました。ボンボレット谷に40軒、ビリール谷に40軒、ルンブール谷には80軒で、予算は1軒につき10万ルピー、総工費は1600万ルピーとけっこうな額になります。今はルピー価値が下がっていて1600ルピーは1000万円強になっていますが、数年前に両替したルピーを使っている私の頭は、1600ルピーは1500万円ぐらいに反応してしまう。何にしても大金であることに変わりはありません。

 

 もし10万ルピーをカラーシャの1軒の家屋の修繕に使うとすれば、トイレやベランダを作ったり、室内の壁を直したり、棚や戸棚の設置など数カ所の工事ができます。

 

 しかし、実際にうちの村で行われた修理は期待に及びもつかない微微たるものでした。うちのバラングル村は人口500人60世帯の、ルンブール谷では最大のカラーシャの集落です。それなのに、80軒のうち11軒しか修理援助のリストに掲げられていません。うちの村がよその村より突出して豊かで家屋の修理が不要というわけでもないのに、関係者たちの独断と偏見に任された結果だろう。

 

 リストにあった11軒は、一間しかない部屋の床にセメントを張っただけの修理で終わった。(ベランダの床が含まれた家もあったが)その費用はセメント7~8袋、砂、砂利、セメント職人と人夫3名の1~2日分の賃金で、どう多く見積もっても2万ルピーを超えることはない。

 

 この事業を請け負ったブニーの町からきた請負人に出会ったので、「こんな、床に薄くセメントを塗っただけの仕事では、10万ルピー分にならないのではないか」と苦情を言ったら、「いやいや、私が受けたのは4万5000ルピーで10万ではない」と彼は言ったのだ。では、残りの5万5000ルピーはどこに行ったのか?地元の人たちは、「それは関係した人間たちの懐に入ったんだよ」と言う。

 

 そこで私はルンブール谷出身でカイバル・パシュトゥーン州の少数派議席議員のワジールザダにこの件について電話した。彼は「このプロジェクトは最終的に5万6000ルピーで入札された」と言う。それでも入札価格がいくらにせよ、プロジェクトが掲げた1軒10万ルピー分の修理は履行せねばならないのではないか。そうでなかったら、「一軒、2万ルピーの修繕プロジェクト」と公表しなければならない。

 

 ワジールザダは「数日後にペシャワールから技師を現地に送って、一軒一軒回って仕事をチェックする。もし満足にやってなかったら、入札価格の金も支払われない」と言う。それにしても、1部屋の床にセメントを張っただけの作業が10万ルピーの価値に替わるはずがないと思う。

 

 

Moreover they have their cultivated farms to grow crops which are not enough for populated families in these days though, and have goats and cows for dairy products. They are absolutely not poor as people outside world think about.

 

I’ve been working on the Kalasha society since 1990’s as a volunteer bases in Rumbur Kalasha valley, to bring the first hydroelectric power project, to promote the basic education on children, to encourage handmade crafts include paper producing, to set up the multi-purpose hall & Children’s library, to construct protection walls etc.

Now I feel it’s the time for my retirement of volunteer work on the Kalasha, only a few activities, children’s library, handicrafts and the book of story tellers, can be continued. Many of Kalsha family are able to manage their lives by themselves. They have to do. I want to spend my life here calmly surrounded peaceful nature-rich environment which I thank to god to have with the Kalasha. 

 

However, here I become to noticed one Government project on the Kalasha valley that makes me very upset, usually I try not getting involved any governmental matters.

 

It has issued under “ PM Imran Khan 5 Million Houses Project” for shelterless people in all over Pakistan. In Kalasha valleys that there were 160 houses on the list to repair work, 40 houses for Bomboret, 40 for Birir and 80 for Rumbur valley and the budget was 100,000 Rs (one lakh Rs) per house, total 16,000,000Rs (160 lakh Rs = 1.6 crore Rs) 

 

If you spend one lakh Rs to repair the house in the Kalasha valleys, you can do several works, building toilet, making veranda, repairing walls, simple interior facilities as new shelves and cupboards, so on. 

 

However, the fact in my village was far less work done. My village, Balanguru was the biggest Kalasha village in Rumbur which has about 60 household, 500 population. Although only 11 families among 80 were on the list. And these families have got just their one-room mud floor cemented (some got also on veranda floor) which cost of 7~8 bag of cement, sand and gravel, one cement man and a few labourers  estimated maximum 20,000 Rs.

 

When I met across the contractor from Bunni, I complained him it is not enough work for the cost of one lakh. He told the budget of one lakh has reached here 45,000 Rs. Then where are the rest of money, 55,000 Rs? Local say it has gone to the concerned officers’ pocket.   

 

I called Wazirzada, MPA of minority seat from Rumbur about this matter. He said it was 56,000 Rs per household of final bidding price, not one lakh. I think whatever the bidding price is, the contractor has to work as worth one lakh Rs. Otherwise it has to be announced “Project of simple repair of the house, budget of 20,000 Rs”  

 

MPA Wazirzada told he will send the expert engineer to check the work at all houses on the list. If not satisfied with him, the bidding money will not pay to the contractor. Even so, simple cement work on the floor of one-room house won’t be in exchange for one lakh Rs repair work.

 

写真上)母屋だけのカラーシャ家屋。この小さな母屋の床と出口の周りにセメントを張っただけ。家の主人は満足いかない様子。

写真中)彼の家も床にセメントを張っただけ。壁は自分たちで塗った。

写真下)作業するセメント職人と人夫たち。この家庭は定まった収入がないので、せめてボロになった壁も塗り直してくれても良さそうなのに。

 

 

カラーシャの名を使ったさらにひどい汚職 / More corrupted works on the name of helping the Kalasha 

 カラーシャの家屋修繕の他に、「カラーシャ建物の改修工事」と名を打つプロジェクトがある。これが輪をかけて驚いてしまう。

 

 

聖域サジゴールの石壁の一部に天井をつける

 

 サジゴールはカラーシャの男たちが山羊を捧げてサジゴールを通して神に祈願する宗教的な聖域で、女性は立ち入り禁止の場所だ。元来、自然の中のサジゴールなので、人工的に手を入れるところはそんなにないはずで、これまでにもすでに囲いを作ったり、男たちが座る丸太を置いたり、わざわざ外からの援助すら必要のないものに援助金が使われている。

 

 今回はすでにあった囲いの石壁の一部に、5~6本の柱を立て細い梁の上に平板を敷いて天井を張り、その3分の一ほどを平板で覆って、道具置き場にしただけの作業。現地の人たちに言わせれば、多く見積もっても5万ルピーはしないと言う。それが、この予算は100万ルピーで計上され、95万ルピーが消えてなくなっていることになる。

100,000 lakh (10 lakh) Rs to make shabby roof at Sajigor, sacred religious sanctuary which local say cost less than 50,000 Rs. The stone wall has been already built before, so that it cost for slender scantlings for pillars and ceiling. 

 

 

バシャリ(女性の生理・出産の家)は以前から金ズルになっている/Bashali is the targets for pulling aid money 

 

 女性たちが生理や出産の際にこもる家、バシャリは援助プロジェクトのターゲットになっている。私が来てからの30年間、何度建て替えられたり弄られたりしたかわからない。現在は、写真の右手の建物、トイレ付きの2室が使われている。各部屋には冷蔵庫、扇風機もある。手前の階段左には最近増築された台所もある。奥の建物はもバシャリとして建てられたものだが、完成してるのかしてないのか知らないが、誰も使ってない。

 

 カラーシャの生活レベルからすると、この段階で十分満足できるものと思われる。私はむしろ、女性たちへの栄養学や出産にあったってのソフト面の情報交換やサポートが必要だと思う。女性たちも今のままでバシャリは快適だと言っている。

 

 男性中心で考えられたプロジェクトは、特にバシャリにおいては、もうたくさん、うんざりと思っているのに、あろうことか、ワジールザダ州議員は、さらに今回600万ルピーもの予算で、このバシャリのリノヴェーションを通している。彼に言わせると、「バシャリにはきちんとした境界線が必要で、そのために石塀を頑丈にしなければならない」そうだが、今の石塀も何年か前に結構な予算で造られていてまだ壊れそうにもない。先日、その石塀の表面をセメントで撫で付けるような作業をしているのを見かけた。その作業は私からすると遊んでいるようにしか見えなかった。

 

 他にも過去の「金ズルプロジェクト」がまだまだ出てくるが、気分が悪くなってきたので、今回はこれで終わろう。

 

 

6,000,000 lakh (60 lakh ) Rs to renovate the Bashali, house of delivery and menstration, in Rumbur.  The Bashali house is always the target of aid projects. There have been many projects for Bashali since I came to live the valleys, some were useless, some were even not completed.

 

        At the present women in Rumbur say staying at Bashali is quite comfortable, there are 2 separate houses attached bathroom, kitchen, 2 fridges and many beddings. I don’t understand what is more urgent needs there. MPA Wazirzada told me there need proper boundary along the river side. Then OK they can build it, but by the cost of 60 lakh? It seems nonsense. This work is continuing. I will take photos the site.