ヤギの角のペーストで民間療法 / Folk remedy of goat horn paste

カラーシャの育児では赤ん坊を風呂に入れないので、湿疹が出たり、ノミに喰われまくったりで、毎晩風呂に入れる日本から来た私には赤ん坊がかわいそうに思えてならない。薪ストーブの上の大きなヤカンには湯が沸いてるので、私のタライを持って来て、マララビビを入浴させたいとムズムズするが、そこまでおせっかいはできない。その代わり、ではないが、ここには民間療法がある。ヤギの角(シン)を焼いて、石の上で水を加えながら摩ってできたペーストを顔前面に塗る。

これは肌の保護と栄養を与える働きがあり、寒いとき、風邪を引いた時、頭痛の時などに特に乳児に広く行われている。私がカラーシャ谷に来たばかりのチョウモスでは、たくさんの女性たちがこれを塗っていて、その真っ黒な顔にぎょっとしたものだ。その場合はおしゃれで化粧代わりに塗る。確かに、おでこに羊の角の模様を縁取った下の、まつ毛の長い瞳が妙に神秘的に見えはする。だが、1日、2日と経ち、ペーストが剥がれてくると、垢か汚れにしか見えず、外部の人間は驚くのだ。でも山羊の角はコラーゲンみたいな栄養が多く入っていそうできっと効果はあるとは思う。